離婚を考えている方にとって、どのような方法で離婚を進めるべきかは非常に重要な問題です。日本の法律では、離婚には主に三つの方法があります。具体的には、協議離婚、調停離婚、そして裁判離婚です。
これらのうち最も多いのは協議離婚であり、離婚の大半は協議離婚により成立しています。
しかし、協議離婚においては、離婚の際の条件が明確に定められることなく、単に離婚届けの提出のみにより成立していることも少なくありません。
また、協議離婚は弁護士を介入しない場合にはお互いで直接、離婚をするかどうかや離婚の条件を協議しなくてはならず、このことに多大な負担を覚えるケースも少なくありません。特にDVやモラハラを伴うケースではこれが顕著です。
そのため、このような協議離婚のデメリットを踏まえ、調停離婚により離婚を進めることも少なくありません。
そして、調停離婚は裁判所の調停委員の介入の下、比較的穏やかに離婚を成立させる方法として多くの方に選ばれています。そこでここでは、調停離婚について詳しく解説します。
調停離婚とは
調停離婚とは、家庭裁判所で行われる調停手続きを通じて離婚を成立させる方法です。調停委員会が仲介役となり、夫婦間の話し合いを進めます。調停委員会は、通常、裁判官と調停委員で構成され、双方の意見を聞きながら合意点を見つけ出す役割を果たします。
また、子どもの親権や面会などを巡りお互いの意見対立が激しい場合には、裁判所の調査官が関与することもあり、子どもの福祉の観点から専門家の立場での調査や意見を受けることが可能です。
調停離婚のメリット
1,話し合いによる解決 | 調停離婚は、裁判離婚と異なり、話し合いを重視します。話し合いによる解決という意味では協議離婚に近く、これにより、双方が納得のいく形で離婚を進めることができます。 |
2,費用の軽減 | 裁判離婚に比べて費用が抑えられることが多いです。調停は、申し立ての際に作成、提出すべき書面も簡素で多くないことから、必ずしも弁護士を介さずとも申し立てが可能です。その結果、弁護士費用や裁判費用が少なくて済むため、経済的な負担が軽減されます。 |
3,時間の短縮 | 裁判に比べて手続きが迅速に進むことが多く、離婚成立までの時間が短縮されます。 |
4,プライバシーの保護 | 調停は非公開で行われるため、プライバシーが保護されます。ただし、協議離婚とは異なり、調停委員等の関与はあるため、その限度で離婚に関する事情が当事者以外に知られてしまうことは否定できません。 |
調停離婚のデメリット
1,合意が難しい場合 | 双方が合意に至らない場合、調停が成立せず、最終的には裁判に移行することになります。そうなると、離婚調停のために要した時間と労力が無駄になるともいえます。 |
2,感情的な負担 | 話し合いが長引くと、感情的な負担が増えることがあります。 |
調停離婚の手続き
1,申立て | 調停離婚を希望する場合、まず家庭裁判所に調停の申立てを行います。申立書には、離婚を希望する理由や解決したい事項(親権、養育費、財産分与など)を記載します。 |
2,調停期日 | 申立てが受理されると、調停期日が設定されます。調停期日には、夫婦双方が出席し、調停委員会と話し合いを行います。調停期日は、お互いが順番に別々に調停委員と話をすることから話合いの機会で、直接顔を合わせることはありません。 |
3,調停の進行 | 調停委員会は、双方の意見を聞きながら合意点を見つけ出すための話し合いを進めます。必要に応じて、複数回の調停期日が設定されることがあります。期日は概ね1~2か月に1回、開かれます。 |
4,調停の成立 | 双方が合意に至った場合、調停調書が作成され、これに基づいて離婚が成立します。調停調書は法的効力を持ち、後日、家庭裁判所に提出することで離婚が正式に成立します。 |
5,調停の不成立 | 合意に至らなかった場合、調停は不成立となり、裁判に移行することができます。 |
調停離婚で取り決める事項
調停離婚では、以下の事項について話し合い、合意を目指します。
1,親権 | 未成年の子供がいる場合、どちらが親権を持つかを決定します。親権は、子供の福祉を最優先に考えて決められます。 |
2,養育費 | 子供の養育費について、金額や支払い方法を取り決めます。養育費は、子供の生活費や教育費をカバーするために必要です。 |
3,面会交流 | 親権を持たない親との面会交流の方法や頻度を決定します。子供の健全な成長のために、面会交流は重要な要素です。 |
4,財産分与 | 夫婦が共同で築いた財産をどのように分けるかを決定します。財産分与は、公平に行われることが求められます。 |
5,慰謝料 | 離婚に至った原因が一方にある場合、慰謝料の支払いについて話し合います。 |
調停離婚の進め方
調停離婚をスムーズに進めるためには、以下のポイントに注意することが重要です。
1,冷静な話し合い | 感情的にならず、冷静に話し合いを進めることが大切です。感情的な対立は、調停の進行を妨げる原因となります。 |
2,専門家の助言 | 弁護士やカウンセラーなどの専門家の助言を受けることで、適切な判断を下すことができます。専門家のサポートを受けることで、調停がスムーズに進むことが期待できます。 |
3,柔軟な姿勢 | 相手の意見を尊重し、柔軟な姿勢で話し合いに臨むことが重要です。妥協点を見つけるためには、双方が歩み寄る姿勢が求められます。 |
4,準備 | 調停に臨む前に、必要な資料や情報を整理しておくことが大切です。財産の状況や子供の生活費など、具体的な情報を用意しておくことで、話し合いがスムーズに進みます。 |
調停離婚のまとめ
調停離婚は、話し合いを重視し、比較的穏やかに離婚を進める方法として多くの方に選ばれています。費用や時間の面でもメリットがあり、プライバシーが保護される点も魅力です。しかし、合意に至らない場合は裁判に移行することもあるため、冷静な話し合いと専門家の助言を受けることが重要です。調停離婚を検討している方は、ぜひ一度、家庭裁判所や弁護士に相談してみてください。