このコラムを書いた弁護士:武田 諒

出身:徳島 出身大学:香川大学
離婚および男女間の問題に関しても、依頼者がより豊かな人生を歩むための一助となるべく、精力的に取り組んでいる。 離婚や男女問題は、個人の人生に大きな影響を及ぼす事柄であり、深刻な事態に至るケースも少なくない。こうした状況において、依頼者に寄り添いながら、解決に至るまで伴走することを心掛けている。 また、離婚の場面において大きな影響を受ける立場にある子どもの視点にも配慮し、子どもの観点からも適切な解決を目指している。
財産分与、親権、養育費、慰謝料など、複数の問題が絡む案件を取り扱っており、当事務所に入所以降、多くの経験と実績を有している。
離婚調停とは、「夫婦関係調整調停」をいい、家庭裁判所で調停委員・調停官を介して、離婚条件の話し合いを行う手続きです。
離婚に向けた協議が夫婦間で進まない場合や、配偶者が離婚に応じない場合は、離婚調停を家庭裁判所に申し立てることが有効となってきます。
離婚調停を申し立てたいと思っても
裁判所での手続きを自分で行うことができるのか
法律の専門家である弁護士にお願いした方が良いのか
など、悩まれる方は多いのではないでしょうか。
本稿では、本人で離婚調停を進める場合、反対に弁護士をつける場合のそれぞれのメリット・デメリットについて説明します。
1 離婚調停は自分で進められる
離婚調停は、第三者である調停委員・調停官を介して、話し合いによって離婚条件を整理・合意していく場となります。
弁護士を立てなくても本人で申し立てることは可能であり、実際に自分で進めるケースもあります。
以下では、離婚調停申立ての手続きに際しての準備や方法、その後の流れや対応などについて詳しく解説していきます。
①必要書類の準備
離婚調停の申立てには、下記のものが必要になります。
・申立書と写し
・収入印紙(1,200円)
・郵便切手(高松家庭裁判所の場合は1,170円)
※裁判所によって異なります。
・戸籍謄本 など
収入印紙、郵便切手は郵便局、戸籍謄本は市役所で取得できます。
最近では、マイナンバーカードを用いてコンビニでも戸籍を取得することができます(ただし、対応していない場合もあるので注意が必要)。
申立書も裁判所のHPからダウンロードすることが可能で、書き方が不明な場合には裁判所に確認することもできます。
ご自身で必要書類を準備し、家庭裁判所に申立てを行うことも可能です。
②調停期日への出頭
必要書類が受理された後は、家庭裁判所から期日調整の連絡が来ます。
申立人と裁判所の都合をすり合わせて期日を決め、裁判所が相手方に対して離婚調停の呼出状を送ります。
申立人と相手方は、調停期日に裁判所に出頭しなければなりません。
③調停期日の流れと所要時間
申立人と相手方は、それぞれ別の待合室に待機し、調停委員が交互に話を聞いていくことになります。
一方当事者から30分程度話を聞き、交替でもう一方の当事者からも同様に30分程度話を聞き、それを繰り返していきます。
調停委員は、双方の話を公平に聞き、中立的な立場から両者の対立点を整理して進行していきます。
調停委員が当事者の間に入ることで、当事者同士が直接対峙するストレスは軽減されます。
1回の調停で双方の話がまとまらないとしても、次回までに双方で検討しておくべき事項を定めて、次回期日を予定します。
1回の調停で要する時間は、凡そ2時間から2時間30分程度です。
1ヵ月に1回程度のペースで調停期日を積み重ねていくことになります。
そして最終的に調停で折り合いがついた場合には、調停成立となり、話し合いでの解決が困難であった場合には調停不成立として終了します。
④まとめ
制度上は自分で進められるとはいえ、調停は法的な交渉の場でもあります。
親権、養育費、財産分与、慰謝料など、複雑な条件を整理しなければならないため、法律の専門知識が求められる場面も少なくありません。
具体的には、自分が有している権利を守るためには、適切に主張し、必要な証拠を提出する必要があります。
そのため、法的知識を有しない場合には、このような判断が困難な側面があるのです。
次項では自分で調停を起こす場合のメリットやデメリットについて詳しく見ていきましょう。
2 離婚調停を弁護士なしで進めるメリットとデメリット
弁護士をつけずに調停を進めることには、一定のメリットがあります。
しかし、同時に見過ごせないデメリットも存在します。
ここではそのメリットとデメリットについて解説していきます。
⑴ 本人で進めるメリット
弁護士費用がかからない経済的メリット
最大のメリットは「費用がかからない」ことです。
弁護士に依頼すると、着手金・報酬金・日当などでそれなりに費用がかかります。
自分で対応する場合には、申立費用や交通費など、数千円~数万円で済む場合がほとんどです。
しかし、離婚調停は弁護士の適切な助言によって慰謝料や財産分与で得られる額が増え、結果的にプラスになることも大いにあり得ます。
そのような意味で、弁護士は不要だと思っていても、一度法律相談を行い、弁護士に適切なアドバイスをもらうことはとても有益です。
⑵ 本人で進めるデメリット
①法的知識がないと不利になる可能性
一方で、自分で離婚調停を行う場合、法的な知識がないと、調停委員にうまく主張を伝えられなかったり、相手の主張に押されてしまったりすることが多々あります。
調停は「話し合い」ではありますが、法的な根拠がある主張の方が説得力を持ちます。
また、調停で成立した内容は法的効力(当事者に対する拘束力)を持ちます。
そのため、条件の意味を十分に理解しないまま合意してしまうと、予想していなかった義務を負いかねず、後悔につながることもあります。
さらに、本来受け取るべき、もしくは本来支払うべき適切な金額での慰謝料や養育費の取り決めを行うためには、専門知識や離婚調停の経験を有する弁護士に相談しなければ判断が難しい局面があり得ます。
②適切な主張や証拠提出ができない可能性
あなたの権利を守るためには、適切に主張し、必要な証拠を提出する必要があります。
しかしながら、法的な知識を有しない場合には、法的観点を踏まえて適切に主張することや、主張を基礎づける適切な証拠を確保することが困難な側面もあるでしょう。
法的観点からこちらの主張の可否、相手方の主張の適否を見極めるためには、離婚事件に精通している弁護士をつけることが有益となります。
③解決までに時間がかかる可能性
本人で対応している場合には、法的観点に基づいた主張整理がされず、必要な証拠の提出までに時間がかかるなどして、調停期間が長引く可能性も否めません。
④すべて本人で対応しなければならない負担
主張書面や提出証拠を準備しなければなりません。
また、調停の期日間での相手方とのやり取りでは、本人で直接対応しなければならず、精神的な負担も小さくありません。
3 離婚調停を弁護士に相談するメリット
次に、弁護士に相談・依頼することで得られるメリットについて解説していきます。
上記で述べたように、弁護士に依頼すると、着手金や実費、報酬などの費用が発生しますが、離婚調停でかかる費用以上に大きなメリットを得られる場合があります。
そこで、ここでは調停を有利に進めるための具体的な利点を紹介します。
①調停前に戦略的な準備ができる安心感
弁護士は、離婚調停の流れや争いになりそう点を熟知しています。
事前に相談することで
どのような主張をすべきか
どの証拠を準備すべきか
など、戦略的な準備が可能になります。
これにより、適切な主張や必要な証拠の提出をすることができ、自身の権利を守ることができます。
②調停期日に同席してもらえる心強さ
弁護士に正式に依頼すれば、調停期日に同席してもらえます。
調停委員とのやり取りや、相手方の主張への反論も、弁護士が中心となって行ってくれるため、精神的な負担が大きく軽減されます。
調停期日においても双方の主張を整理し、その都度必要な対応を取れるため、心強いでしょう。
③交渉や連絡のストレス軽減
離婚調停では、期日間での当事者のやり取りも少なくないため、相手との直接交渉が避けられません。
中にはモラハラや高圧的な相手方との直接的なやり取りは当事者にとって大きな負担となり、言いたいことが言えなくなったり、精神的に追い詰められてしまい、相手方の主張を受け入れざるを得ない状況に陥ったりする場合も十分にあります。
しかし、弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静かつ合理的な交渉が可能になります。
特にDVや不貞行為が絡む場合は、なおさら弁護士の介入が不可欠でしょう。
④準備の軽減
弁護士に依頼している場合には、必要に応じて打ち合わせを行い、離婚調停に際して必要となる書面作成や証拠等の提出準備をすべて弁護士が行います。
自分で準備する手間が省け、日々の生活に支障をきたすことなく離婚調停に臨むことが可能となります。
4 離婚調停の弁護士費用について
弁護士費用には
①着手金(契約時にお支払いいただく金額)
②報酬(解決条件によって案件が終了した際にお支払いいただく報酬金)
③日当(期日等で遠方に出向く際の費用)
などがあります。
法律事務所によって設定金額が大きく異なります。
なかには「相談料無料」や「着手金無料」などと設定している事務所もありますが、実際のところは報酬を多額に設定しているような事務所もありますので、弁護士費用を調べる際にはHP等で事前に確認しておくといいでしょう。
当事務所の料金は以下のページをご参照ください。
5 まとめ
離婚調停は、法律に基づいた冷静な話し合いの場です。
もちろん、自分自身で申し立てを行い、離婚調停を進めることも可能ですが、感情的な対立や法的な複雑さが絡む場面では、弁護士のサポートが大きな力となり、結果的に自分の権利や得られるべき金銭を手にすることが可能となってきます。
制度上は本人だけでも進められる調停ですが、親権や養育費、財産分与、慰謝料などの複雑な条件を整理するには、法的知識と交渉力が必要です。
弁護士は、調停前の準備から期日の同席、調停後の訴訟対応まで一貫してサポートしてくれます。
法的根拠に基づいた主張で、あなたの希望を実現する可能性が高まります。
自分自身で対応する場合は、費用を抑えられる反面、相手に弁護士がついている場合や、法的な主張が必要な場面では知識面において対応や交渉が難しくなる可能性があります。
弁護士費用は事務所によって異なります。
初回相談無料や分割払い対応の事務所もあるため、複数の事務所を比較することが重要です。