1.はじめに
ある日突然、裁判所から封書が届き、中身を確認すると、「調停」や「呼びだし状」「出頭」などの言葉が並んでいたら、驚かれるでしょう。
チェック
ちなみに離婚調停とは、夫婦の一方が離婚したいと思っていても、話し合いが上手くいかない場合や話し合いができない場合に裁判所に申し立てて、裁判所での話し合いの場を持ってもらう制度です。
世間一般では、調停により離婚をする方法を「離婚調停」と呼び、我々弁護士や業界でも一般的にそのような呼び方をすることがあります。
ただし、裁判所の手続き上は正確には離婚を求める調停を「夫婦関係調整調停(離婚)」と呼称しています。
この離婚調停では、離婚、親権者、面会交流、養育費、財産分与(年金分割を含む)、慰謝料を定めることを求めることができます。
また、離婚調停と同時もしくは別個に、一方配偶者がもう一方の配偶者に生活費等の支払いを求める「婚姻費用分担請求調停」(婚姻費用調停)や一方配偶者がもう一方配偶者の下で生活する子供との面会を求める「面会交流調停」(面会調停)という調停もあます。
なお、以上のように積極的に離婚を求める他に夫婦関係の改善、修復を目的とした「夫婦関係調整(円満)調停」という調停の方法もあり、離婚を求められた側が、復縁を前提としてこのような調停を申し立てることで関係修復を図ることも可能です。
これらの離婚調停、婚姻費用調停、面会調停はいずれも形式的には別個の調停手続きです。
とはいえ、同じ当事者間の離婚に伴う一連の問題を扱うことから、同一当事者間で同時期にこれらの調停が開かれる場合には、同一家庭裁判所で同じ日に平行して話し合いが行われます。
そのため、本稿ではまとめて「離婚調停等」として説明します。
このような離婚調停等については、相手方と離婚に関して話し合いで折り合いがつかなかった場合に調停に移行したり、もしくは、離婚の当事者間での話し合いもなされずに突然、離婚調停等が申し立てられることもあります。
これらの調停についてはその内容や法的位置づけ、手続などがよくわからず、どのように対応すべきか分からず不安に感じる方もいらっしゃると思います。
そこで、本稿では、離婚調停等が申し立てられた際には、どのように対応すべきか、離婚調停等の手続きに関して説明します。
2.裁判所から呼出状が届いた場合
⑴呼出状が届いたときにすべき最初の対応
裁判所からの呼出状が届き、驚かれると同時に不安に思うでしょう。
しかし、これはあくまでも裁判所での話し合いに来てもらうことが目的です。
呼出状は、裁判所があなたに調停手続きへの出席を求める正式な書類です。
この段階では、調停の結論が決まっているわけではなく、あくまで話し合いの場への招集が目的です。
呼出状には、調停期日(話し合いが行われる日時)や調停を行う裁判所の場所が記載されています。第1回目の期日は、書類が届いてから約1カ月前後に指定されています。
期日の呼出には基本的には応じなければなりません。そのため,日程をよく確認し、期日当日の予定を確保するようにしましょう。
しかし、期日の日程自体は裁判所が一方的に定めた日であるため、もし都合がつかない場合には裁判所に連絡しましょう。
日程変更等の対応を行ってもらえる場合もあります。
また、呼出状と一緒に届く意見書を期限までに裁判所に提出する必要もあります。
⑵離婚調停等に出頭しなかった場合
正当な理由なく裁判所に出頭しなかった場合には、5万円以下の過料となる場合もあります。
前述のとおり、予定があわなければ日程調整をしてもらえる場合もあるため、出席して対応した方が良いでしょう。
しかし、すでにやむを得ない理由があって、連絡なしに欠席をしてしまった、という方もいらっしゃるかもしれません。
この点、期日に欠席したからといって離婚が成立してしまうわけではありません。
ただし、連絡をせずに複数回連続で欠席するなど、離婚調停等に応じる見込みがないと判断された場合には、離婚調停等は不成立となり終了することがあります。 もっとも、離婚調停等が不成立となった場合には、相手方がなお離婚を求める場合には離婚裁判を提起する可能性があります。
3.離婚調停等の目的や具体的な手続きについて
⑴離婚調停等の目的
離婚調停等は、夫婦間で離婚に対する意見が合わない場合に、裁判所が間に入って話し合いを進めます。
離婚調停等の目的は、両当事者の話合いでの解決を図ることにあります。
具体的には、調停委員という中立的な第三者が双方の意見を聞き、公平な立場から双方が合意できる点、合意できない点をすり合わせながら進行します。
1回の調停期日で双方が合意に至り、解決に至ることは稀です。
多くの場合、双方の主張や言い分が対立するため、次回期日を設けた上で、対立している点で譲れる範囲があるかどうかを次回期日までに検討してきてもらうことになります。
このように期日間での検討と期日でのすり合わせをしていくことで、話がまとまり合意に至るケースも多々あります。
調停当初は主張や言い分が対立していたとしても、調停での話し合いを重ねていくうちに一方もしくは双方で歩み寄って合意できる場合もあるでしょう。
結果的に、双方が合意できる場合には調停成立となり、合意に至らない場合には調停不成立となります。
⑵調停委員会について
調停は、家庭裁判所の非公開の場(部屋)で、当事者双方と調停委員会及び家庭裁判所の職員(書記官や調査官)とで行われる手続きです。
調停委員会は、2名の調停委員と1名の裁判官とで構成され、通常は2名の調停委員が当事者から申立てに至る事情などを聴取し、適宜、裁判官に報告や意見交換をしながら調停の進行を主催します。
調査官は、未成年の子がいるケースにおいて、親権者の定めや面会の実施の有無・方法を巡り対立が生じている場合に、子の福祉の観点から適切な調査や助言を行うべき立場にある裁判所の専門職です。
そして、このようなケースにおいては調停委員と共に調査官が同席をして調停を進めることとなります。
⑶調停の実施方法について
調停は、上記のように、基本的には調停委員2名と当事者とがお互いの考えを調停委員を通じて話し合う手続きです。
話合いは常に調停委員を通じて行われ、調停成立の場面を除き、当事者同士が直接同席をして調停を進めることはまずありません。
すなわち、調停は当事者の一方からの話を調停委員が聞き、次にもう一方の当事者に調停委員がこれを伝え、それに対する考え等を聞き、再度、他方当事者に伝えるということで進められていくのです。
そして、調停のためには実際に裁判所に赴き、午前もしくは午後の2~3時間程度を使って話合いを順番に進めて行くこととなるのです。
話合いの結果、前述のとおり、初回ですべてがまとまることは稀なので、その日に話し合った内容をお互いが持ち帰り、次回期日に備えます。 また、調停の場で話題に上がった内容などに関し、書面にて主張や証拠を提出することも可能となっているので、調停で伝えられなかったことや、客観的な証拠(婚姻費用算定のための収入資料や慰謝料請求の根拠資料、財産分与のための通帳類など)を提出することもあります。
4.調停の実際の流れについて
(1)調停の申し立てから初回期日まで
調停は、申立後、1~2か月後に初回の期日が指定されます。
その上で相手方に対して調停申立書の写しや期日呼び出し状などが家庭裁判所から送付されます。

なお、調停期日の呼び出しは申立人と相手方とで30分ずらしてありますので、相手方が早めに来ているなどしない限りは直接、裁判所で顔を合わせる可能性は低いです。また、裁判所の待合室ももう一方当事者とは別の部屋を案内され、使用することとなっています。
これを受け取った相手方は、当該期日への出頭の可否を確認し、併せて申立書に対する認否などを内容とした意見書等を提出することとなります。
こうして調停の初回期日を迎え、当事者双方が出頭をすれば、申立人から最初に30分程度で申し立てに至る事情の確認などがなされます。
その上で、今度は相手方の言い分などを調停委員が聴取し、さらに申立人、相手方と順番に30分ずつ程度で調停室にて言い分などを調停委員に伝えることとなります。
⑵2回目以降の調停期日の進行について
まずは1回目の調停期日にて双方の言い分を整理し、2回目以降はその言い分を前提に双方が歩み寄りの可否を検討していくようになります。
離婚は、往々にして協議すべき事項が多いことから、特定の内容についてはどこまで譲歩できるかもしくはできないのかを予め明確にしておくことが大切です。
また、自分が譲歩できないと考える点について、相手方は自分に合わせて譲歩してくれるのかを予想することも大切です。
というのも、調停はあくまで「どちらが正しいか」ではなく「お互いで離婚条件を決められるか」の問題であるため、お互いが自分の考えや意向に固執すると最終的には調停不成立に終わり、離婚という本来の結論に至れないからです。
5.弁護士に依頼するメリット
離婚は、取り決めるべき条件や内容が多く、かつ当事者間のそれまでの関係によって非常に多様であること、また離婚が成立したとしても子どもを通じて養育費や面会などの問題が続くため、解決に至るまでに非常に多くの感情的対立や争点が生じます。
弁護士に依頼した場合には、弁護士が依頼者の窓口として相手方と連絡対応を行い、感情的な主張を直接受けるストレスも緩和されます。
また、取り決めるべき条件に関しても専門的な知識、経験から一つ一つ最善の結果へと導くことができます。